地方での働き方・暮らし方

地方移住後の「お金」の話:50代元会社員が知るべき税金・社会保険・年金の手続きと注意点

Tags: 地方移住, 税金, 社会保険, 年金, 手続き, 50代

地方への移住は、働く場所や暮らし方だけでなく、税金や社会保険、年金といった「お金」に関する手続きや考え方にも変化をもたらします。特に長年会社員として勤務されてきた方にとっては、会社が代行してくれていた手続きを自身で行う必要が生じる場面もあり、戸惑うこともあるかもしれません。

この変化を事前に理解し、必要な手続きを適切に行うことは、移住後の経済的な安定や安心して暮らす上で非常に重要です。ここでは、地方移住を検討・実行されている50代以上の元会社員の方向けに、移住に伴う税金、社会保険、年金に関する主な変更点や手続き、知っておくべき注意点について解説します。

移住に伴う税金に関する変更点と注意点

地方への住所変更は、主に住民税の納付先や計算方法に影響を与えます。また、働き方や収入源が変わることで、所得税の申告方法も変わる可能性があります。

住民税

住民税は、その年の1月1日時点で住民登録がある市町村に対して納付する税金です。 例えば、2025年の途中で地方へ移住した場合、2025年度の住民税は移住前の自治体に納付することになります。そして、2026年度からは移住先の自治体に納付することになります。 住民税の金額は前年の所得に基づいて計算されるため、移住直後の年度の住民税は、移住前の会社員時代の所得に基づいて計算されるのが一般的です。移住後の所得が減少した場合でも、移住前に高い所得があった場合は、翌年度の住民税負担が重くなる可能性があることに留意が必要です。 納付方法については、特別徴収(給与からの天引き)から普通徴収(自身で納付書を使って納付)に変わることがほとんどです。移住先の自治体から送付される納付書に従って、金融機関やコンビニエンスストアなどで納付する必要があります。

所得税

会社員時代は、給与所得に対する所得税は年末調整によって計算され、会社が納税手続きを代行していました。しかし、移住後に個人事業主として事業を始めたり、不動産収入や年金収入が主な収入源となったりする場合は、原則としてご自身で確定申告を行う必要があります。 確定申告では、1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算し、税務署に申告して所得税を納付します。青色申告を選択すると、税制上のメリットを受けることができますが、事前の手続きや帳簿付けが必要です。 初めての確定申告に不安がある場合は、移住先の税務署や税理士に相談することも検討されると良いでしょう。

その他の税金

不動産を取得した場合は不動産取得税や固定資産税が課税されます。自動車を所有する場合は自動車税・軽自動車税が課税されます。これらの税金についても、移住先の自治体や都道府県に納付することになります。

移住に伴う社会保険に関する変更点と手続き

健康保険や年金についても、会社員から離れることで手続きが必要となり、加入する制度が変わることが一般的です。

健康保険

会社員の方やその扶養家族は、勤務先の健康保険組合や協会けんぽに加入しています。会社を退職すると、この健康保険の資格を喪失します。移住後の主な選択肢は以下の通りです。

  1. 国民健康保険への加入: 移住先の市町村が運営する国民健康保険に加入するのが一般的な方法です。移住先の市町村役場の担当窓口で手続きを行います。保険料は前年の所得や加入人数によって計算され、自治体によって計算方法や保険料率が異なります。
  2. 会社の健康保険の任意継続: 退職後も最長2年間、元の会社の健康保険を継続できる制度です。ただし、退職日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があることなどの要件があります。保険料は全額自己負担となりますが、退職時の保険料と同額(事業主負担分含む)となるため、国民健康保険よりも安くなる場合があります。
  3. 家族の健康保険の被扶養者となる: 配偶者が会社員などで健康保険に加入しており、自身が一定の収入要件を満たす場合は、被扶養者となることができます。

ご自身の状況や移住先の自治体の国民健康保険料などを考慮し、最適な選択肢を検討することが大切です。

年金

会社員の方は厚生年金に加入しています。会社を退職すると、厚生年金の被保険者資格を喪失し、国民年金に加入することになります。 国民年金には、以下の3種類(第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者)があります。

会社を退職し、個人事業主となる場合や無職となる場合は、原則として国民年金の第1号被保険者への切り替え手続きが必要です。移住先の市町村役場の担当窓口や年金事務所で手続きを行います。国民年金保険料は一定額ですが、所得が少ない場合などに免除や猶予の制度があります。

その他

年金受給に関する注意点

50代の方は、まもなく年金受給開始年齢を迎える方もいらっしゃるでしょう。老齢年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金)の受給開始手続きは、通常、年金事務所で行います。移住先の年金事務所が手続きの窓口となります。 受給開始年齢や手続き方法、年金額などについて不安がある場合は、事前に年金事務所や街角の年金相談センターで相談することをお勧めします。 また、働きながら年金を受給する場合の注意点(在職老齢年金制度)や、年金受給開始年齢を遅らせる「繰り下げ受給」による年金額の増額についても、ご自身のライフプランに合わせて検討することが重要です。

情報収集と相談

移住に伴う税金や社会保険、年金に関する制度や手続きは複雑に感じられるかもしれません。しかし、慌てずに一つずつ確認していくことが大切です。

信頼できる情報源から情報を入手し、必要に応じて専門家(税理士、社会保険労務士など)に相談することも有効な手段です。

まとめ

地方移住は、新たな生活の始まりであり、そこには税金や社会保険、年金といった「お金」に関する手続きや変化が伴います。50代以上の元会社員の方々にとって、これらの手続きはこれまで会社が行っていたものが多く、ご自身で行うことに慣れていない場合もあるでしょう。

しかし、住民税の納付先変更、所得税の申告方法の変化、健康保険・年金の切り替えなど、事前に知っておくことで、スムーズな移行が可能となります。移住先の市町村役場や税務署、年金事務所といった公的な窓口は、正確な情報提供や相談に応じてくれます。

移住後の生活を安心して送るためにも、これらの「お金」に関する手続きや制度について計画的に情報収集を行い、分からないことは積極的に相談することが推奨されます。これにより、予期せぬ負担を避け、新たな地域での生活基盤をしっかりと築くことができるでしょう。